Reportイベントレポート
-
2022年03月31日環境を考える人づくり 自然との共生を学ぶ
令和元年度連続講座「なにわ友あれ環境塾」
-
前のページへ戻る
令和元年度の連続講座なにわ友あれ環境塾のテーマは「ココが知りたい!環境問題」です。
最近ニュースなどで話題になっているような環境問題について幅広く学びます。第1回目は、大阪府立環境農林水産総合研究所生物多様性センターの近藤美麻先生に「生物多様性の今を知ろう」として、大阪府で今起きている生物多様性に関する問題についてお話いただきました。


前半では生物多様性とは何か?をお話しいただきました。
私たちの生活は様々な生物からの恵みで成り立っていること、新幹線の先頭車両の風の抵抗を少なくする流線型(野鳥のカワセミ)や、ヨーグルトがくっつかない蓋の構造(ハスの葉)など、生き物の形や性質を真似て作られた技術(バイオミミクリー)をクイズも交えてご紹介いただきました。
生物多様性には3つの多様性(生態系の多様性・種の多様性・遺伝子の多様性)があること、そして現在4つの危機によって生物多様性が損なわれようとしています。
今話題の外来生物は、海外から持ち込まれた生物だけでなく、国内の他の地域から持ち込まれた国内外来生物もあることなどを身近な生物「メダカ」などを例にお話され、受講者の皆さんも興味深く聞いていました。後半では生物多様性センターで行っているさまざまな調査研究から、大阪で今生物多様性に関するどんな問題が起きているのかについてご紹介いただきました。
最近話題の水を汲むだけでどんな生き物がいるのかがわかる環境DNAによる調査や、近年になり入ってきた外来生物クビアカツヤカミキリがサクラやモモなどの樹木を枯らしてしまい大きな問題になっていること、最近頻発している自然災害への防災・減災対策としてのグリーンインフラの効果調査、多様な主体が参加して行われているイタセンネットの活動などについてご紹介いただきました。私たちの暮らしは生物多様性からの恵みによって支えられていること、身近な大阪でも生物多様性に関する様々な問題が起きている事、がよく理解できた講座でした。
連続講座なにわ友あれ環境塾の第2回は独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所生物多様性センターの幸田 良介先生から大阪のケモノたちと私たちの暮らしについてご講演いただきました。

大阪府には様々なケモノ(中~大型の哺乳類)が生息していて、在来種のシカ・イノシシ・サル・キツネ・タヌキをはじめ、外来生物のアライグマやヌートリアなども生息しています。
それぞれのケモノたちの特徴や生態を、センサーカメラ調査で撮影された動画を使ってたくさんご紹介いただき、ケモノたちの面白い仕草や意外な暮らしぶりを垣間見ることができました。
休憩時間中には、幸田先生が持ってきてくださったケモノたちの足跡や糞を見せていただきました。足跡や糞はフィールドサインといって、野外でケモノたちの生息を知る手がかりになります。ケモノの種類によって足跡や糞の特徴も異なっている事をご紹介いただきました。
後半はケモノと人との関わりで、大阪府の獣害問題の現状と調査・対策について、シカ(ニホンジカ)の状況を中心にお話いただきました。大阪府では北摂地域にシカが生息しており、高密度に生息している地域を中心に森林植生の衰退や、農業被害が発生しています。
ケモノが農地に出没する理由は山に餌がなくなったからだとよく言われますが、実際には山には餌が取れないほど不足しているわけではなく、農地にもっとおいしい餌があることを知ってしまったからで、農作物の味を覚えさせないことが重要です。
シカは近年急激に増えているとして問題となっていますが、1900年代の大正から昭和の時代に非常に数が少ない時代があって、その前の明治以前の文献などを調べると実は昔もシカはかなりの数が生息していたと考えられるようです。急増というよりは見方を変えれば「回復」であり、現在が異常な高密度であるかどうかは分からないんだそうです。シカや野生動物による農業などへの被害は生息頭数が多い少ないに関わらず起きるもので、捕獲(駆除をする)だけではなく、誘引除去(野生動物の食料となるようなものを管理・除去する)、予防(農地に接近・侵入させない)などを徹底していくことが重要だというお話がありました。
大阪には在来・外来も含めて様々なケモノたちがいて、獣害問題も起きていますが、ケモノたちの生態を正しく理解し、上手く付き合っていくことの大切さを学んだ講座となりました。令和元年度連続講座なにわ友あれ環境塾の第3回は環境事業協会の和田が講師を務めました。
和田は自身の活動として干潟の鳥類と底生生物の調査保全活動をこれまでずっと行ってきました。
前半は干潟で暮らすカニや貝などの生きもの達をたくさんの写真と動画で紹介しました。干潟は遠目から見ると何もいないただの泥地のように見えますが、近くまで行ってじっくり見ると一面小さな生き物だらけです。カニたちの求愛行動やゴカイの群泳の神秘的な行動など生命溢れる干潟を動画で紹介しました。
また、干潟には漁業生産や水質浄化、気候変動の緩和、環境学習の場、水鳥の生息地などの大切な役割があります。
二枚貝が水を浄化する様子や、干潟での暮らしに適応して進化したシギ・チドリの仲間の嘴と餌の関係についても紹介しました。後半では干潟とそこに暮らす生きもの達を見守る取り組みについて紹介しました。
大阪湾では、市民運動から造成された人工干潟である南港野鳥園がこれまで市民・行政・大学・企業など様々な協力があって守られてきたことを紹介しました。全国各地の干潟では人材不足や後継者不足が問題となっています。「干潟を守るために調査をしたいけど、調査ができる人がいないんです・・・」どこの干潟に行っても地元の方からそんな声が聞かれます。
他地域の湿地(干潟)で活動するメンバーと地元の方々が協力して調査や保全活動を行っている例として大分県中津干潟の事例を紹介し、湿地間協力によって様々な活動が行えることを紹介しました。国境を越えて渡りをする渡り鳥を守るには、フライウェイ(渡り鳥の渡りのルート)にある繁殖地・中継地・越冬地を全て守らなければなりません。渡り鳥を守るための国際的な協力の取組みとして「東アジアオーストラリア地域フライウェイパートナーシップ」があり、絶滅が危惧されている世界的な希少種ヘラシギの保全活動にフライウェイ全体で協力して取り組んでいることを紹介しました。
いのちあふれる干潟の魅力とその大切さ、それを見守るたくさんの方々とその取組みについて学ぶ講座になりました。
令和元年度連続講座なにわ友あれ環境塾の第4回目は、大阪市立環境科学研究センターの中尾賢志先生から「マイクロプラスチック問題ってなあに?」として今話題の海洋ごみの問題についてご講演いただきました。

マイクロプラスチックは5mm以下の小さいプラスチックのことで、洗顔剤などに入っているマイクロビーズなどの「一次的マイクロプラスチック」と、大きいプラスチックごみが海岸で紫外線や波浪によって劣化しどんどん細かくなってできた「二次的マイクロプラスチック」があります。
マイクロプラスチックが問題なのは、プラスチックには有害な化学物質を吸収・吸着させる性質があり、マイクロプラスチックは表面積も大きいので海水中の有害化学物質をどんどんくっ付けます。食物連鎖でマイクロプラスチックが高次の捕食者へと移行していく間に生物濃縮が起こり、多くの化学物質が蓄積されると考えられます。
今のところは人間が魚介類を食べても問題のないレベルだと考えられていますが、しかし海に流入するプラスチックは今後更に増えていくと予想され、2050年には海のプラスチックの量が魚介類の量を超えるとも言われていて、どのような影響を与えるのかが心配されます。

後半は顕微鏡を使ってマイクロプラスチックの観察を行いました。洗顔剤に入っているマイクロビーズや、干潟の泥の中から見つかったマイクロプラスチックなど、実際の大きさとどんな形をしているのかが観察により知ることができました。
その後、グループに分かれて、プラごみの問題そしてマイクロプラスチックの問題についてそれぞれ解決策を話し合い発表してもらいました。ペットボトルやレジ袋などを減らす(マイボトル・マイバックの普及)という身近なところから取り組める意見が多く出ていましたが、国際的な取引きやプラスチックごみの処理の方法についての意見や、一般市民へのマイクロプラスチックへの理解の普及啓発をもっと進めるべきという意見も出てきました。

ニュース等でも非常によく取り上げられている問題をテーマにしたということもあって、受講生の関心も高く、最後に受講者達で考える時間を設け、たくさんの意見を出してもらえた講座になりました。
令和元年度連続講座なにわ友あれ環境塾、4回講座後の受講生のスキルアップとして実際の環境保全活動に参加してみようということで、第1回講座の中でも話が出てきた国の天然記念物である希少淡水魚イタセンパラの保護と淀川の自然環境の保全再生の活動を行っている淀川水系イタセンパラ保全市民ネットワーク(イタセンネット)の城北ワンド群での定例活動に参加しました。

全体のあいさつの後、環境塾の受講生は河川敷のごみ拾い活動をしました。雨や台風の後だったこともあってか、河川敷にはレジ袋やお菓子の包装の袋などプラスチックのごみがたくさん落ちていました。受講生の皆さんは積極的にごみ拾い活動をしてくださり、堤防付近のごみをたくさん拾い集めることができました。

その後、ワンドでの地曳網調査を見学し、第1回講座の講師だった生物多様性センターの近藤先生からワンドとイタセンパラ保護の取り組みについてもお話を聞きました。
今回の地曳網では外来魚のブラックバスやブルーギルもよく捕れていましたが、在来魚のカネヒラやヨドゼゼラ、モツゴ、そして綺麗な婚姻色になったイタセンパラも見つかりました。
川と海がつながっている事を示すモクズガニもたくさん見つかり、活動に参加していた子ども達も驚いていました。最後に見つかった魚や生き物について1種類ずつ丁寧な解説があり、受講生も興味津々に聞いていました。


イタセンネットの保全活動は毎月定例で行われています。今後も身近な淀川の自然環境を守る活動に参加していきたいと思います。


